無排卵月経 anovulation

無排卵月経の特徴(セルフチェック方法と治し方)

無排卵月経とは

無排卵月経とは

無排卵月経とは、生理のような出血はあるものの、何らかの原因で月経周期に1回あるはずの排卵がない状態を指します。

女性の身体は、エストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)という2つの女性ホルモンに大きく影響を受け、排卵・月経が起こるのですが、無排卵月経は、ホルモンバランスの乱れや他の病気が原因となり、排卵できていない状態です。人によっては生理不順や不正出血などの症状も見られます。

このページの監修医師

エマ婦人科クリニック名古屋栄:仲川裕子院長の写真(女医)

エマ婦人科クリニック名古屋栄 
仲川裕子院長

2012年富山大学医学部医学科卒業。市民病院の産婦人科医長経験等を経て、エマ婦人科クリニック名古屋栄を開院。日本産科婦人科学会専門医。

目次

無排卵月経のセルフチェック

無排卵月経の簡易的なチェックシートです。ご自分でチェックしてみてください。

  • 月経周期が短い、または長い
  • 出血量が少ない、または多い
  • 月経周期がバラバラで不安定
  • 月経時以外に不正出血がある
  • 不妊(避妊せずに1年以上経過した)
  • 基礎体温の高温期がない(一相性)

上記のセルフチェックで1〜2個以上あてはまる方は、無排卵月経の可能性があります。もちろん、医師の診断を待たねばわかりませんが、無排卵月経のリスクがあるので、婦人科を受診しましょう。

♦一般的な月経の目安♦
  • 月経周期:25~38日
  • 月経期間:3~7日
  • 経血量:20~140ml

一般的な月経を目安として、月経周期や期間、経血量に大きく違いがある場合は、注意が必要です。月経周期が規則的であったとしても排卵がない場合もあるので、妊娠を希望している方、なかなか妊娠しない方は早めに医師への相談をおすすめします。思春期や閉経が近い40〜50代の方は、ホルモンバランスが安定せず、月経周期の乱れや無排卵月経がみられることが多いです。

無排卵月経の5つの特徴

無排卵月経の5つの特徴

無排卵月経には5つの特徴があります。セルフチェックにあてはまる項目があった方は、くわしい特徴を確認してみましょう。

1.症状を自覚しづらい

無排卵月経は自覚症状がなく、自分では気づかないことがほとんどです。生理不順や不正出血などの症状があったとしても、排卵の有無は基礎体温の測定や検査をしてみないとわかりません。

そのため規則的に生理がある方、受診することなく、気づかないうちに無排卵を放置しているという場合もあります。

さらに、ホルモンバランスの乱れなどが原因で、ご自分では生理だと思っていた出血が、実は不正出血で排卵もされていなかったというケースもあります。

2.月経時の経血量(出血量)が少ない、多い

  • 生理中に少量の出血がだらだらと続く
  • ナプキンが汚れるほど経血量が多くない
  • 経血量が多く、1時間ごとにナプキンを変えている

上記のような症状がある方は、無排卵月経やその他の病気の可能性があります。茶色っぽいカスのような経血、レバー状のドロッとした経血など、経血の性状に不安がある方も病院を受診したほうがよいでしょう。

3.月経周期が短い、長い、不定期

月経間隔が25〜38日間を目安に月経周期があきらかに短い、または長い場合は、排卵前後で変化する女性ホルモンのバランスが崩れ、排卵されていない可能性があります。

また、生理が1カ月に2回くる、または生理が2カ月以上こないなど、月経周期が不定期な方も排卵がうまく行われていないかもしれません。

4.不正出血がある

月経時以外に赤や茶色の不正出血が続く場合は、無排卵月経を含む何らかの病気の可能性があります。また、明らかな出血でなくても、おりものが黄色や茶色っぽい場合は不正出血かもしれません。どちらにせよ、月経周期以外の出血は、早期に受診したほうがよいでしょう。人によっては、排卵時に少量の出血がある、妊娠した場合に受精卵が着床する際に出血がみられることもあります。

5.不妊である

妊娠を希望している人が避妊していないのにもかかわらず、1年以上妊娠しない場合は無排卵による不妊かもしれません。無排卵月経は自覚症状がないことも多く、規則的に生理がきていても排卵していない場合があります。通常、排卵されていれば月経周期は基礎体温が二相性ですが、無排卵の場合では基礎体温が低温の一相性になることがほとんどです。

妊娠を希望する方、自分で排卵の目安を知りたい方は、基礎体温を測ってみましょう。無排卵の状態を放置しておくと、さらなる不妊の原因になるため、妊娠を望む方は基礎体温を測定するとともに、お早めに婦人科への相談をおすすめします。

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無排卵月経の7つの原因

無排卵月経の原因は、さまざまな要因による女性ホルモンの乱れや他の病気などが考えられます。ご自分に当てはまるものがないか、確認してみましょう。

1.無理なダイエット

無理なダイエットをすると、身体の防衛反応が働き、私たちの身体は心臓を動かしたり、呼吸をしたり生命維持機能を第一優先にします。そのため、排卵などの生殖活動は後回しになり、生理不順や無排卵の症状がみられる場合があります。

また、体脂肪には女性ホルモンのエストロゲン産生を促す働きがあるため、過度な体脂肪の減少は、無排卵月経の原因の一つです。

2.過剰なストレス

女性ホルモンは脳にある視床下部や下垂体からの指令で分泌されますが、一生涯で分泌される女性ホルモンは、ティースプーン1杯分程度といわれています。ホルモンの分泌を促す視床下部や下垂体はストレスの影響を受けやすく、過剰なストレスにより少量しか分泌されない女性ホルモンのバランスが崩れると、排卵が起こらなかったり月経が止まったりする場合があります。

3.乱れた生活習慣

睡眠不足や暴飲暴食など乱れた生活習慣は、過剰なストレスと同様に女性ホルモンのバランスが乱れる原因になり、無排卵や月経周期の乱れを引き起こす原因となります。

乱れた生活習慣そのものがホルモンバランスを乱すだけでなく、生活の乱れによるストレスも女性ホルモンに影響を与える原因といえるでしょう。

4.激しいスポーツ

精神的ストレスだけでなく、身体的なストレスも女性ホルモンに影響を与える原因です。激しいスポーツなど、肉体的に過剰な負荷がかかると、身体は肉体的な回復を優先するため、排卵や女性ホルモンの減少などの生殖機能に影響がでると考えられています。

5.喫煙

タバコに含まれるタールやニコチン、一酸化炭素は女性ホルモンや女性生殖器に悪影響を与える可能性があります。特にニコチンは血液循環を悪くするため、運ばれるべき栄養や酸素が不足がちになってしまい、女性ホルモンの減少や卵巣機能が低下して、排卵や月経に影響を与えます。

6.疾患の影響

特定の疾患が原因で無排卵になることもあります。

  • ♦多嚢胞性卵巣症候群♦
  • 卵巣の中で卵胞が一定以上に成長せず、排卵に障がいが起こる疾患です。男性ホルモンが過剰になるホルモンの分泌異常が原因と考えられています。無排卵月経や生理不順の原因として認められることが多く、エコー検査やホルモン検査で診断されます。
  • ♦脳下垂体腫瘍♦
  • 脳の下垂体はホルモン分泌を調整する機能があるため、腫瘍によりその機能に障がいが起こり、女性ホルモンのバランスが崩れることで無排卵になる場合があります。
  • ♦甲状腺機能異常♦
  • 甲状腺はのどぼとけの下にあり、代謝や成長などを調整する甲状腺ホルモンを分泌する器官です。バセドウ病や橋本病など、甲状腺の機能異常をきたす病気は、排卵にも影響を与える場合があります。

7.薬剤の影響

抗精神薬などの一部の薬剤には、乳腺刺激ホルモン(プロラクチン)の分泌を促す副作用があります。プロラクチンは母乳の分泌を促すだけでなく、妊娠しにくい身体にする作用もあるため、無排卵の原因になる可能性があります。

無排卵月経の治し方は?治療方法4選

無排卵月経の治し方・治療方法4選

無排卵月経は、妊娠を希望するか希望しないかで、選択する治療方法が変わってきます。また、慢性的な無排卵月経は、骨密度の低下や子宮がんのリスクを高める原因になることがあるため、妊娠を望まない方も放置せず、医師への相談や生活習慣の改善をしましょう。

1.重要なのは生活習慣の改善

無排卵月経は、ストレスや生活習慣の乱れが大きく関係しているといわれています。生活習慣を見直すだけでも症状の改善が期待できますので、できることから改善していきましょう。

女性ホルモンを整えるには、バランスの良い食生活と睡眠、過剰なストレスがない生活が重要です。特に睡眠不足は女性ホルモンの分泌を低下させる原因になるといわれています。睡眠時間の確保が難しい方は、寝具や睡眠環境を整えて睡眠の質を上げてみてはいかがでしょうか。

また、冷えは女性機能の低下につながると考えられています。冷たい飲み物ばかり飲まない、お風呂にゆっくり浸かるなど、身体を冷やさないようにしましょう。

2.排卵誘発法

妊娠を希望する方は、薬剤により排卵を促す治療を選択することが多く、代表的な排卵誘発法には、クロミフェン療法やゴナドトロピン療法があります。

ホルモン量や年齢などから治療法が選択されるので、妊娠を希望する方は医師に相談してみましょう。(※当院では排卵誘発法を行っておりません。ご希望の方には、不妊治療専門の医療機関への受診をおすすめしております。)

クロミフェン療法

クロミフェン療法は、下垂体や視床下部、卵巣を刺激する内服薬を月経周期のタイミングで内服し、自身のホルモン分泌量を増加させ排卵を促す治療法です。卵巣の中で卵胞が成長したタイミングで、排卵を促す薬剤を注射することもあります。

ゴナドトロピン療法

ゴナドトロピン療法は、下垂体から分泌される排卵を促進するホルモンと同じ作用があるホルモン製剤を注射し、卵胞の発育を促す治療です。ホルモンと同等の働きがある薬剤を体外から投与するため、内服薬による排卵誘導の次のステップとして選択されることが多い治療法です。

3.ホルモン療法

妊娠を希望しない方は、ホルモン製剤を内服しホルモンバランスを整える治療を選択する場合があります。2つの女性ホルモン、エストロゲンとプロゲステロンの分泌量に応じて、プロゲステロン製剤を投与するホルムストローム療法と、エストロゲン・プロゲステロン製剤の両方を投与するカウフマン療法などがあります。

4.漢方薬

漢方薬は人間の自然治癒力を助け、症状の解決を目指す治療法で、副作用が現れにくいのがメリットです。血の巡りを良くするものや、卵巣や子宮の働きを高める漢方薬があります。

保険が適応になる場合もありますので、気になる方は漢方薬を治療に取り入れているクリニックに相談してみましょう。

無排卵月経がいつまでも続くときは当院へ

無排卵月経は、ご自分では気づきにくい症状ですが、放置すると不妊やその他の病気につながることがあります。セルフチェックに該当するものがある方や、妊娠をご希望になる方は早めに受診してください。当院では、症状がなくても月経や排卵に不安を感じている方のご相談を承っております。どうぞお気軽にご相談ください。

INFORMATION

2024/11/12
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12/8(日)・15日(日)は代診の男性医師の診察となります。
2023/01/05
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